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フランス料理とイタリア料理・・・いまさらですが。

フレンチは堅苦しく、イタリアンは気楽。
本当ですか。フランス人は儀式が好きで、イタリア人はざっくばらん?

料理を語るのにフランスとイタリアという対比が正しいのかどうかという問題を根本的に考えて見ましょう。

EUの先駆者たちを除けば、世界ではまだまだ『国』の概念が強く、本来は都市が中心になって開催するオリンピックでの国家的な盛り上がりはたいへんなものです。いつから人はこのような考えを持つようになったのか、食文化において『国』は重要な要素なのか、考えてみる必要がありそうです。

9世紀には現在のフランスの西半分、12世紀ではパリを中心とするごく一部しかフランス王国領でしかないのです。17世紀、ルイ16世の時代にはほぼ今のフランスの姿になりますが、それでもスイスやイタリアに近いサヴォワ地方やニース周辺がフランスになるのは、1860年つまり日本の幕末まで待たねばなりません。
イタリアに至っては、476年に西ローマ帝国が滅んで以来、1861年の統一まで小さな王国がたくさんあったのです。今回のテーマではありませんがドイツだって1871年(明治4年)にやっと連邦国家として成立するのです。
つまり、19世紀のフランスにナポレオンが現れて国家意識を国民に植えつけるまで、日本を含めたほとんどの民衆の頭の中には『国』などという意識はなかったのです。

ではそれまで自分たちのよりどころとするものはなんだったのか、それは実生活で深く関わるそれぞれの地方ないし地域だったのです。食文化も、当然のことながら地元で手に入る食材と長い歴史の中で育んできた調理法により成立してきたのです。そこには『イタリア』も『フランス』も『ドイツ』もありません。あるのは、プロヴァンス、トスカーナ、バイエルンといった『地方』です。

フランスにはフランス文化が醸成される時間と中央集権による冨の集中がみられるのに対し、イタリアにはその両方が充分ではないのです。つまり、イタリアにはイタリア料理といえるほどの国を代表する料理体系は、ここ数十年でやっとできつつあるという状態でしょう。私たちがイタリア料理と呼んでいるのは、ほとんどがナポリ料理やヴェネト料理、あるいはトスカーナ料理なのです。
フランスでもフランス人が慣れ親しんでいる料理はプロヴァンス料理、ブルゴーニュ料理、リヨン料理などなどであって、いわゆるイタリア料理と同じくどれもけっして『肩』の凝るものではありません。

一方、日本で一般的にいうフランス料理とは、フランス宮廷料理に始まって19世紀に世界を席巻したグランド・キュイジーヌgrande cuisineを指しています。この料理体系はフランスで発展しましたが決してフランス人のためにあるのではなく、それを楽しむことのできる金銭的、時間的な余裕のある世界中の人のためにあるのです。この『食の楽しみ』を満喫しようとすると単にうまい、まずい、好き、嫌い、の個人的な選択に、ワインやチーズなどの知識やある程度の行儀のよさなども多少なりとも要求されるのです。日本の会席料理や中国の満漢全席に似ているともいえます。

イタリア料理が好きな人は、プロヴァンス料理やブルターニュ料理、アルザス料理、リヨン料理をぜひ試してもらいたいものです。

フランス料理がたまらなく素敵だ、と思うならパスタ、ピザやパエーリャではなく体系としてでき上がっている会席料理や満漢全席と比べてください。

料理に限らず、なにかを並べて比較するには同じ次元で行なうべきでしょう。だからイタリアンとフレンチの比較はできないのです。
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