フランス語のかな表記 II

『…ッ…』は、フランス語の発音には存在しないことを前回書きました。
フランス語では…ss…や…tt…のように子音が重なっても、
イタリア語のように『…ッ…』の発音にはならない、ということでした。
コンピュータ用語のほとんどをかたかなで表記するのと同様、料理やケーキ、
ワイン、チーズなどはフランス語を日本語には訳さず、というか訳せないので
発音をそのままかたかなで書くことがとても多いので、書く人の思い込みや無知、
勘違い、あるいはパソコンの打ち間違いなどでひとつの語がずいぶんと
違ったかなになってしまいます。

同じことが長母音記号『ー』にもあてはまります。日本人は、鯉[コイ]と
行為[コーイ]を識別できるのに対し、多くのフランス人には同じに聞こえます。
フランス語の意味の違いを発音の違いで表すものの中に、例えば[イ]という短母音と
[イー]という長母音の使い分けがないからなのです。
ですから、『おじさん』と『おじいさん』は、フランス人にとっては、同じに聞こえます。

一方、日本人には、sous と ceux はどちらも[スー]としか聞こえませんし、
travail [トゥラヴァーユ]と salut [サリュ]の語尾の母音は、[ユ]としか認識できません。
子音でも b と v、l と r など、それぞれを対立させることが苦手な人が
日本人には大勢います。
いずれにせよ、フランス語や英語をそのままかなで表記することは不可能です。
だから、なるべく原語の音に近づくように工夫するしかないのです。

幸いにも、日本語にはフランス語にはない、語のアクセントがあります。
例えば、箸[シ]と橋[ハ]です。そして前回の『ッ』や今回の『ー』もあります。
これらを駆使してフランス語をかたかな表記すれば、少しは原音に
近づけるのではないか、と思っていますし、他に方法は思いつきません。
ブリチーズをブリと書いてしまうと、魚の鰤のように[リ]になる公算が高いので、
ブリーとする方が brie の発音に近づけるのではないでしょうか。
それでもブリーを[リー]と発音する人もいるし、なにより日本語の語のアクセントは、
関東と関西でも異なります。
今、フランス語をかな表記せざるを得ない私たちとしては、
せめて自分が納得できる理由で、つまり誰かに質問されたら、
苦しいながらも理由を説明できる程度には考えて書くことしかないでしょう。

正解のない、でもなんとかしなければならない、たいへんな問題なのです。

日仏料理協会
宇田川政喜
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