子と仔

現代において、紙の辞典というものは現実を速やかに追うには残念ながら不向きになってきています。私たちのガストロノミの世界でも情報産業ほどではないにしても、新しい技術や知られていなかった食材など未知のものがどんどん登場し、それに従って辞典の収録語も増やしていかなければそのうち役に立たなくなります。
2009年12月、つまり一年前に全面的に改訂し、タイトルも体裁も改めた『新フランス料理用語辞典』を重版する旨の連絡が出版社から来て喜びました。もちろん、爆発的に売れての在庫切れによる改訂の機会、というわけではなく、初めから印刷部数を抑えての出版だったのですが、何はともあれ著者としてはありがたいことです。この機会を利用して何十かの新語を加えたり、間違いを訂正したりできます。

で、悩んでいたことを再び顕在化させなければならなくなったのです。それもひとつやふたつではないのが問題ですが、ここではそのうちのひとつ、「子」と「仔」についての考えを述べてみましょう。
フランス料理にはveau仔牛、agneau仔羊、caneton雄仔鴨、canette雌仔鴨など多くの「こ」が登場します。まだ大人になっていない家畜を肉の柔らかいうちに食べるのが目的です。私は、この「こ」を「小さな動物」の意味の「仔」を、「子」は、人間ないし擬人化できる猫や犬に主に使っています。だから「子羊」と書くと「ペットにしている小さな羊の」ように感じます。でも、客観的には「子羊」が間違い、ということは決してありません。

大修館の『広漢和辞典』で調べてみると、
子=むすこ、むすめ。…小さなものを表すこともある。…
仔=③現こ(子)。動物の幼少なもの。
とあります。
要するに「子」でも「仔」でもかまわないのです。

でも言葉とは、正しいか正しくないか、の上に、漢字、かなの一字に意図を込めたい、込めるべきだ、と思いませんか。

ご意見をお聞かせください。mail : afjg@dmail.plala.or.jp

次回は、同じような問題をフランス語の文法で書いてみます。

日仏料理協会
宇田川 政喜

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