フランス料理界の将来

先週、西洋野菜の生産者に会いました。、以前はフランス文学を研究しており、事情で大学を去って農業を始めた人です。柴田書店の月刊誌『専門料理』で連載中の「エスコフィエを読む」の翻訳を担当していただいていることから、監修者である私としてはメールのやり取りだけでは足りず、たまに会合を持ちます。

打ち合わせが済んで、あの大地震に話が及びました。直接被害はなかったものの、注文がぱったりと途絶えたそうです。野菜にこだわって仕事をしているフランス・イタリア料理店に卸していたのですから、レストランが休業したり、客が大幅に減少してしまえば当然のこととはいいながら彼の野菜への発注はなくなります。生産品の特化がこの惨状を招いたのではないか、と憂いていました。

いままでも再三述べてきたように、日本やアメリカでいうフランス料理とは、非日常の食の喜びをプロが提供するものです。そしてその周辺には料理材料や機材を供給する業者はもちろんのこと、知識や考え方を提案する私たちのようなサポーターもいます。そのフランス料理の本体の商業的成立が、少なくとも東日本では、脅かされています。もともと、この種の“非日常の喜び”は満ち足りた日々の中で要求されるものであり、日常生活とはさほど関わっていません。大災害の前にその商業基盤の脆弱さが顕在化している、と私は考えています。

でも、必ずまた食を通じての心の充足を求める時がやってきます。ガストロノミは、さほどやわではありません。料理人は料理人として、サポーターはサポーターとして、目の前の困難を克服しつつ、必ずまたやってくる隆盛期に備えましょう。「繁栄期にある文明が自然災害で滅びたことはいまだかつてない」と歴史家アーノルド・ジョゼフ・トインビーは言っています。

日仏料理協会
宇田川政喜


インターネット(スカイプ)によるテレビ電話方式のフランス語授業を始めました。
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