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「食のフランス研修」レポート 2014年2月~5月

帝国ホテル東京  調理部   都沢さん : 
Mandarin Oriental (Sur mesure par Thierry Marx)2015年ミシュラン2つ星
帝国ホテル東京  調理部   加藤さん : 
Le Royal Monceau Raffles Paris            2014年ミシュラン1つ星

パリ着は2月25日、研修開始は2月26日です。

お二人とも、フランス滞在は3か月ですが、実際の研修は5月17日に終え、その後はフランス旅行をなさっています。

研修目的  
都沢さん:自分自身の今までを確認し、確信したかったから。
加藤さん:今までやってきた自分の仕事をフランスで通用するのか確認したかったから。

~ 都沢さん、加藤さんに研修の様子をうかがいました ~

Q. パリ到着後はすぐに宿舎へ向かったのですか?
R. 加藤さん:はい、スタッフからの電話連絡が夜9時頃ありました。
  都沢さん:宿舎に着いてフランスへ来たと言う実感がわきました。

Q. 研修先へはスタッフとともにいらっしゃいましたが、最初の印象はどうでしたか?
R. 都沢さん:厨房はきれいだったし、すぐに馴染んで仕事を始めることができました。
  加藤さん:皆さんとても親切に受け入れてくれました。

Q. 最初に与えられた仕事は何でしたか?どのくらいの期間?
R. 都沢さん:付け合せ野菜のカットでした。1週間くらいだけれど、希望すればやりたい仕事もさせてもらえたと思います。
  加藤さん:ガルドマンジェでの下仕事を2~3日。

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Q. 次に与えられた仕事は?
R. 都沢さん:火入れや味付けまでするようになりましたし、その後ほとんどの仕事をしました。
  加藤さん:ガルドマンジェでのサービス中の料理出しです。与えられた仕事は全て受け入れましたし、やりたい仕事を伝えてやらせてもらいました。

Q. 厨房内のフランス人については?
R. 加藤さん:皆よく働いていて、週明けなど忙しい時は昼食もとらずに仕事をすることもありました。

Q. フランス語に関してはどうでしたか?
R. 都沢さん:フランス語は以前勉強していましたが、それでも最初は片言でスタッフと話す程度でした。その後スタッフとも親しくなりましたが、単語のみでなく前置詞とセットで覚えないと伝わらず聞き取れないことが多かったです。
  加藤さん: 仕事のフランス語は何とかわかっても、プライベート時間での会話が難しかった。言われていることはそこそこわかっても、返す言葉がうまく出てきませんでした。

Q. 厨房で日本と違うな、と思ったことは何ですか?
R. 都沢さん:設備の違いです。星付きの店でも必ずしもいい環境ではないなと思いました。
  加藤さん:皮むき・くりぬき・はさみなど日本の厨房では普通に常備されている調理器具が個人調達だったことです。その他フランス人は日本の食材や調理法に加え北欧・南米の調理法などを積極的に取り入れていました。

Q. フランス研修を終えて一番うれしかったこととよかったことは何ですか?
R. 都沢さん:うれしかったのはスタッフのほぼ全員からもっと一緒に仕事がしたいと言われたこと。わかってはいたけれど自分自身の長所短所を再確認できたことはよかったことです。
  加藤さん:サービスを任せられたこと、アレルギーのお客様の特別メニューを任せられたことはとてもうれしかったです。行ってよかったと思うのはフランス人と多くの時間を共にすることでフランス人気質が少し理解できたことです。

Q. 休日はどのように過ごしましたか?
R. 都沢さん:主に散策で20区全てに行きました。その他デパートの地下も面白いです。
  加藤さん:食べ歩きとパリの観光。またおいしそうな食材を見つけては部屋で料理もしました。

Q. これからフランスへ行こうとしている方たちへのアドバイスなどありますか?
R. 加藤さん:研修の期間にもよりますが、3か月だとあっという間で日本にいる間に緻密に計画を立てておけばよかったと思います。 
  都沢さん:言いたいことを伝える・理解する・発展すると言うコミュニケーションのためにフランス語はかかせません。

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お詫び = グラン・カフェとカフェ・ド・ラ・ぺ

前回の“フランス料理あれこれ”の中で、パリの最後の夜に日本人の友人たちと「グラン・カフェ」で会食したことを書きました。
食べたのはオペラ通りからオペラ座を見て左側にあるグラントテルの一階にある高級ブラスリ。これはグラン・カフェではなく、カフェ・ド・ラ・ペだったのです。いつも読んで下さっている友人が指摘してくれました。そう、そのとき彼女も一緒だったのです。

“グラン・カフェ”はオペラ座に向かって右側、カプシーヌ大通りにあるアール・ヌーヴォの内装の伝統的なカフェです。1875年開業で、リュミエール兄弟が世界で初めて映画の上映を行ったことでも有名です。映画はマルセイユ近くのラ・シオタの駅に蒸気機関車が入ってくるシーンで、動く映像を初めて見る観客はその迫力に思わず逃げた、そうです。今はコーヒーなどの飲み物のほか海の幸の盛り合せplateau de fruits de merを売り物にしている年中無休24時間営業のレストランでもあります。

一方カフェ・ド・ラ・ペは、1862年開業のナポレオン三世様式の建築のル・グラントテルの一階にあります。ヴィクトル・ユーゴー、ゾラ、モーパサンといった作家やチャイコフスキーやマスネなどの作曲家が顧客でした。今はインターコンチネンタルホテルチェーンに属している高級ブラスリです。

この旅行でマルセイユに行った時に、ラ・シオタまで足を伸ばしてリュミエール兄弟について仲間と話をしたにもかかわらず、書く時にカフェの名前を間違えてしまいました。

お詫びして訂正します。

日仏料理協会
宇田川政喜

またまたガストロノミ

前回のフランス行きには料理長の国際会議出席と共にもうひとつのテーマがありました。普通のフランス人が“ガストロノミ”をどのようにとらえているか、を確認することです。普通といっても何らかの形で食に関わっている人たちに会うたびに彼らがどのように“ガストロノミ”ないし“ガストロノミック”という語を使うのかを調べることです。

リール市で昼食時にムール貝料理moule à la bièreを食べるために入った繁華街のブラスリでサーヴィス係の人に「リールのガストロノミは素敵ですね。」と賛辞を述べたら「メルシ ボークー。フランドル地方はガストロノミでも知られているんですよ。」との答が返ってきました。そのレストランでは内装が地方の特色を色濃く出していたしサーヴィス形態やメニュー構成もまごうかたきブラスリで、誰が見てもガストロノミックではないのですが…そのサーヴィス係にとってはガストロノミックなのでしょう。

会議の後、参加者全員で郊外のルレ・シャトのレストランに行きました。向かう道すがらこの地方をよく知る仲間の料理長が「あの店はエスコフィエ協会の仲間が料理長をしているミシュラン二つ星のガストロノミックなレストランで、庭園がとても立派です。」と教えてくれました。質も種類も満足のいくアミューズ・ブーシュに続いて美しい盛り付けのフルコース。飲み物はいわずと知れたシャンパーニュ、厳選された白、赤ワインが料理と共に供されます。食後のコーヒーには当然のことながら多種類の小菓子が添えられます。

マルセイユではブイヤベース三昧。この街には魚専門の三つ星レストランがありますが、ガストロノミックではないブイヤベース専門店に予約を旧知の友に頼んでおいたので、2軒とも専らブイヤベースを白の地酒で楽しみました。この友人はかつて南フランスの三つ星レストランでパティシエをしていて日本のとあるホテルチェーンの製菓長でしたから彼なりのガストロノミの定義ができているはずです。マルセイユのブイヤベースは分量がとても多く、従って前菜は注文しませんでした。彼の奥さんはデザートでさえ夫婦で分け合えば充分と言い、食後はコーヒーだけでした。ある意味ブラスリでの正しい注文の仕方だと言えます。

パリに戻って会ったのはランジス卸し市場で肉を商う仲間たちです。パレ・ロワイヤル近くのブラスリを選んでくれました。バーカウンターにてパテ・ド・カンパーニュのカナペで一杯やりながらわいわい。席に着いたらタブリエ(エプロン)姿のてきぱきとした女性サーヴィス係がオーダーを取ります。前菜、メインディッシュ、デザートです。前からガストロノミックな店ではなくブラスリにしてほしい、と頼んでおいたのでここになったのです。昼下がりの春のパリ、旧知の仲間、うまい料理と酒、至福の時です。でもガストロミックな店ではありません。

伝統の名店タイユヴァンでは気楽なランチコースでした。パリのガストロノミックなレストランはほぼすべて予約の再確認を電話でしなければなりません。友人に頼んでおきました。彼は「ガストロノミックなレストランはさすがに電話の応対も丁重で品がある。」と言っていました。このレベルの店にしては安価なランチ専用の簡易コースを頼みましたが、アミューズ・ブーシュ、前菜、メインディッシュ、デザート、コーヒーに小菓子。食前酒のシャンパンにコースに組み込まれた白、赤ワイン、それにコーヒーの後の食後酒としてアルマニャックまでフランスのガストロノミをすっかり堪能しました。慇懃で丁重でありながら素早いサーヴィス、食卓を盛り上げるちょっとした語りかけ、サーヴィス係の基本的な仕事振りが私たちを優雅な気持ちにさせます。

最後に行ったオペラ座近くのグラン・カフェは日本人の友人たちと一緒でした。19世紀から続くオペラ座近くのホテルのレストランです。店内はパリの19世紀の内装で、さすがに立派です。シャンパンで乾杯をし、前菜とメインディッシュ、デザート、コーヒーと続きます。サーヴィス係はエプロンをかけててきぱきと動く男性。客に話しかける言葉もざっくばらんです。高級ホテルだけのことはあってvestiaire(クローク)はありましたが、高級なブラスリです。

長くなりましたが、フランス人にとってのガストロノミを、端的に定義を質すのではなく、用法を探って彼らのこの語に対する認識を知る、という方法を採ったのです。結果は、“ガストロノミックなレストラン”と“ブラスリ”の差異が私の定義と同じであることが確認できました。10名に満たない対象でしたからガストロノミという学問分野でのフィールドワークというにはとうてい充分ではありませんでしたが、普段その渦中にいるフランス人の“ガストロノミ”なる語の使用範囲を知ることができたのは収穫でした。

“ガストロノミ”の定義は佐原秋生著『ガストロノミ』に譲るとして、ここではガストロノミックなレストランとブラスやビストロの違いを以下に記しておきます。

ガストロノミックなレストラン       
【 料理 】
アミューズ・ブーシュ+前菜(冷菜と温菜の2種の場合あり)+ポタージュ(フランスにはない)+魚料理+口直しの氷菓(フランスではまれ)+肉料理+チーズ(盛り合せから選択)+第一デザート+第二デザート+コーヒー+小菓子やチョコレート
※簡易コースの場合魚か肉の選択、デザートは一皿。
【 飲み物 】
食前酒(シャンパンが主流)+シャンパンを含む白ワイン+赤ワイン+食後酒
【 内装 】
シャトーや館風の豪華絢爛または高級ウルトラモダン          
【 サーヴィス 】
クローク係、ソムリエ、メトル・ドテル (給仕長)、シェフ・ド・ラン(テーブルごとのサーヴィス責任者)。 サーヴィス係は男性主体

ブラスリ・ビストロ
【 料理 】
アミューズ・ブーシュはなし+ボリュームのある前菜+付け合わせ たっぷりの主菜+シンプルなデザート+コーヒー
【 飲み物 】
食前酒(飲まないことが多い)+白または赤ワイン
【 内装 】
料理に合わせた地方色豊かな装飾
【 サーヴィス 】
クローク係、ソムリエはいない。サーヴィス係は女性も多い 


まあこういったところが私なりの識別でしょうか。ガストロノミックなレストランでの食事は多分に非日常的であるのに対しブラスリでのそれは日常的な要素が強い、と言えます。しかし対比する二つの分野の領域は重なる部分も多い、つまりどちらとも言えないケースもあります。ガストロノミックな要素を多く含んでいるブラスリもあるし、フレンドリーな家庭的雰囲気を持つガストロノミックなレストランもある、ということです。

皆さんはどのようにお考えですか。ご意見をお待ちしています。
メールアドレス:afjg@dmail.plala.or.jp

日仏料理協会
宇田川政喜
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