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チーズ

この頃ガストロノミークなレストランで食事をする時にチーズを注文しなくなりました。いい年になってきて、体が「肉まで終わってこのあと甘味も食べるのにチーズはいいよ」といっているのかもしれません。

美食家のブリヤ・サヴァラン(1755~1826)は、「チーズのないデザートは片目を失くした美人である」とその著作『美味礼賛』で述べているように、チーズはフランスの食卓には欠くことのできないものでした。い草で編んだ大きな盆やチーズカートで運ばれてくる十数種類のチーズからその日の熟成具合をサービス係に尋ねながら好きな分だけ注文するのは、すでに満腹であるはずなのに至福の一瞬です。私は行儀が悪くてデザートも済んでいないのにその後すぐにパイプに火を付けて煙草を吸います。葉巻が好きな友だちも同様です。

こんなレストランでの楽しみはもう随分前に終わってしまいました。日本でもそうですが、フランスでは公共の室内では全面的に禁煙になってしまったのです。その頃からかチーズを注文しなくなった気がします。家では自由ですからいつでも煙草は吸えますが、食後のチーズはめったに食べません。でも好きなので、順番を変えることにしました。前菜の一種として食べるのです。いつの頃からか定かではありませんが、赤ワインより白ワインを飲みながらの楽しみが好きになっています。その意味でも前菜のところでのチーズは悪くありません。肉料理で飲む赤ワインでチーズを食べていたのですが、過熟成チーズが好きな私には上質の赤ワインの風味をチーズが毀してしまうように思えるようになったのです。また、赤ワインの個性もチーズのよさを多少邪魔するようにも思えます。だから白ワインと共に楽しむことが多い前菜の一部としてのチーズは私には悪くないのです。もちろん皆さんにお勧めはしません。でも試してみる価値はありますよ。

この項を書くにあたって久しぶりに我がフランス 食の事典を開いてみました。我ながら“チーズ”の項目がよく書けていると思いました。本棚にお持ちの皆さん、371ページをぜひご覧ください。並みのチーズ通くらいにはなりますよ。

日仏料理協会
宇田川政喜
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