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大衆料理

今年も月28日に世界中の都市で恒例のエピキュロスの晩餐会が開催されます。
近代フランス料理の祖オーギュスト・エスコフィエの誕生日を記念してエスコフィエ協会国際本部の総会でテーマを決めます。今年は「大衆料理 cuisine populaire」。初めは「民衆料理」の訳を付けようと思ったのですが、民衆だと政治的な意味合いを含むのでここは大衆酒場、大衆食堂などと用いる大衆という語を使うことにしました。
フランスのほとんどの飲食店はカフェか、カフェが併設しているブラスリ、ビストロです。日本で多くの人がいまだに持っているフランス料理のイメージを表している店はガストロノミックレストランrestaurant gastronomiqueと呼ばれています。
多くのエスコフィエ協会会員はこのガストロノミックレストランの料理長なので今年のテーマのような大衆料理は普段作っていません。店のコンセプトからしてメニューの値段も普段とは違う安いビストロ価格で提案するわけにもいきません。いわば牛丼を高級料亭で供するにはどうしたらいいか、を考えるのと同じです。
もちろん今回の提案以外にも19世紀から今日に至るまで多くの才能ある料理人がこのテーマに挑んできました。でも私の数少ない経験からして本来の地方の名物料理をしのぐ翻案料理に出会っていません。簡単に言うとおいしくないのです。

今年私の経営する店ではメインディッシュにラングドック地方のカスレを選択しました。カスレは大昔は空豆、後世になると白いんげん豆とソーセージ、鴨か鵞鳥のコンフィ、塩漬け豚肉などを煮てオーヴンで焼いた料理です。ブイヤベースなどほかの大衆郷土料理と同じくとてもヴォリューミーです。この一品をどのようにコース料理に取り入れていくのか、料理人の技量が試されます。

エスコフィエ協会国際本部では世界中どこでもいつでも手に入る食材をテーマに選んできましたが、今年は食材ではなく、高度な料理哲学と技術を要求されているようです。29日以降、スイス、フランス、中国、日本など会員の皆さんがどんな趣向をこらしたのか、インターネットで見るのが楽しみです。

日仏料理協会
宇田川 政喜
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