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テーブルナイフ

どれを見てもほとんどのナイフは先が尖っています。それなのに食卓にセットする食事用のナイフの先はなぜ丸いのでしょう。

先日テレビのあるクイズ番組で出題され、私が正解を与えるという場面がありました。

確かにテーブル以外で先の丸いナイフを見ることはあまりありませんね。事の始まりは、

ルイXIII世の時代に宰相リシュリューの邸宅でのことでした。晩餐会の招待客がとても行儀が悪く、特にナイフの先を使ってつま楊枝のようにして歯間の掃除をするのにリシュリューは我慢がならなかったので、召使に命じて家の食事用ナイフの先をすべて丸くしてしまったのです。 ここまでがテレビでの説明だったのですが、時間が少なすぎて、というより視聴者の興味がここまでと考えた製作者が、ここで終わりにしたのです。

このことが起きたのは1610年とも1637年とも言われますが、いずれにせよ、その当時、王侯、貴族とはいえ、まだまだフランスにはテーブルマナーなどという概念は存在していませんでした。 ルネサンス期にヨーロッパの先進地方となったイタリアから大いに影響を受けたブルボンの王侯や貴族たちは、芸術、建築などあらゆる文化の吸収に努めました。 でもその先進国イタリアでさえ、食卓では、食べかすは床に投げ捨て、汚れた手を隣の貴婦人のスカートで拭く、などひどい有様でした。 この様子は、かのダヴィンチのメモ書きを本にまとめた『レオナルド・ダ・ヴィンチの空想厨房』(東京図書)に詳しく書いてあります。

このリシュリューの振舞をおしゃれと感じた人たちがまねをはじめたのですが、先の丸いナイフ普及の決定的要因は、その後、国王となったルイXIV世でした。 1643年父王が死んで5歳で国王となったルイXIV世は、王位を覗う人たち人たちに命を狙われ、一時はリシュリューの邸宅のあったパレ・ロワイヤルに匿われていたほどでした。 こんな王でしたから、王位に就いた後も常に暗殺の心配があったので、食卓での一層の安全を考慮して、1669年勅令を発し、食卓での先の尖ったナイフの使用禁止を言い渡しました。 これがきっかけでフランスにおけるテーブルナイフの先は丸くなったのでした。 もちろん時代の経過とともにこんな法令はなくなりますが、習慣は今でも残っているのです。 もちろん現代の食卓にはラヨルLaguile などの先の尖った肉用ナイフもよくみられます。

次回はナイフの続きで、フォークについて書いてみます。

日仏料理協会
宇田川政喜
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