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「電子辞書」もう買っちゃいましたか

1992年頃からか、ほぼ毎日、料理やワイン、チーズ、それにガストロノミに関する
フランス語の単語と格闘しています。
はじめは、「フランス料理用語辞典」(1995年刊)、次は全936ページ2段組の
「フランス 食の事典」(2000年刊)、そして去年刊行した「仏和・和仏料理フランス語辞典」
辟易していますけれど、インターネットを含めた関連情報で新しい単語を見つけると、
リストに加えます。

辞典編纂者としての悩みは、これらの新しい情報をどのように既出の辞典に反映させるか、
ということです。よく売れている国語辞典や英和辞典でも10年くらいは改訂しません。

書く側としては、毎年とは言わないまでも、2~3年に一度は新単語を加えたり、
誤りを正したりする機会が欲しいのです。改訂版作成の時間は、全くの新作に比べて
ずっと少なくて済ますが、費用が大きくかさむので、出版社は二の足を踏みます。

 ※ 辞典や事典で、「編纂者」や「。。。編」という表現を見かけます。
   著作物なのだからなぜ「。。。著」としないのかとか、誰かが作成したものをいろいろ
   いじって適当にまとめたものだろう、とかいう意見を聞くことがあります。
   辞典や事典は、すでに存在する単語や表現をアルファベットや五十音の順に並べて、
   対訳や定義を付けます。見出し語の選択、訳、説明は、作成者が行いますが、
   小説や批評などのように全編にわたって著者が言葉の大海の中から拾い出した
   表現で構成するのとは違うので、「。。。著」ではなく「。。。編」を用いることが
   多いのです。

というわけで、出版以来14年も経ってしまった「フランス料理用語辞典」は、もう
買っていただくには、古くなりすぎてしまっています。現代のフランス料理の変化は、
すさまじいものがあり、それに伴う用語もこの辞典では充分に対応できないのです。
だからといって、先ほど述べた理由から出版社が頻繁に改訂版を出せるわけでもなく…

それで電子辞書なら改訂費用、つまり印刷・製本・在庫、といった悩みを解決できる
のではないか、と考え、ある電子辞書メーカーの担当者たちと会ってみました。
それでわかったこと。
   -電子辞書は、本体が驚くほど高価なこと…多くのソフトをインストールすれば
     高くない、とも言えますが、紙の辞書と比較すると何倍もします。
   -電子辞書の本体は、寿命が短い…パソコンの本体と同様に、3~5年で
     新しい辞典ソフトがインストールできなくなりそうです。
     パソコンで経験していることと思いますが、技術の進歩で機能がどんどん高くなり、
     それに対応してソフトも進化します。
     結果として、新しい本体では古いソフトを、古い本体では新しいソフトを、
     利用できなくなるのです。
   -入力の完全性が要求される…「こんなスペルだっけ」というように、
     紙の辞書ならそのあたりのページを開けば、何とかたどり着ける可能性が高い
     のに対し、電子辞書だと、いわゆるピンポイントでなければ、望む単語を
     調べられません。

もちろん、これからの可能性も含めて、いいところもあります。
   -軽くて小さい。
   -発音を仮名表記ではなく、音で聞ける。
   -クリックひとつで、動詞の活用や文法説明などに簡単に飛ぶことができる。
   -各種辞書ソフトを改訂する時間も費用もずっと少なくて済むので、頻繁に改訂できる。

今取り組んでいる「フランス料理用語辞典」は、もちろん紙版です。
でも、紙版でも電子辞書でもない、新しい形の辞書があるはず、と確信し、
検討しているところです。

日仏料理協会
宇田川 政喜
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