料理人のフランス修行
「フランスで本場の料理を作りたい、本場の食材に触れてみたい」、そういう思いで明治の頃から多くの日本人料理人が海を渡りました。
今では、日本のちょっとした都市にはブラスリ、ビストロなどフランス料理店の看板がみられます。そして大半のシェフたちがフランスでの料理修業を謳っています。
そのフランス修行が岐路を迎えているのです。
1868年に成立した明治政府は、欧化政策を推し進め、その一環として鹿鳴館を1883年(明治16年)に完成させたあたりが日本のフランス料理の本格的な始動期でしょう。もちろん、横浜に幕末からどんどんできた外人向けのホテルの存在も忘れてはいけません。そこで働いた日本人調理スタッフの中にはもっと料理を勉強したい、と思った人もいたでしょう。シベリア鉄道で渡仏した、かの秋山徳蔵はもとより、彼に影響を与えた築地精養軒初代料理長の西尾益吉、いやそれよりもっと前にはるばるインド洋を汽船で旅してフランスにたどり着いた何人かの勇者たち。1970年代には、今は大料理人として名を馳せている大勢ののシェフたちが、明治の頃と同様にフランスで修行に励んでいました。
今や日本人料理人のレベルはとても高く、その上フランスの料理本やインターネットでの情報の入手によりフランス修行なしでも本場の料理を知ることができるようになってきています。でも若者たちの「本場で仕事がしたい、本場の食材に触れてみたい」とい気持ちは変わっていません。
とはいうものの、明治時代以来今に至るまで、とても多くの料理人たちはまっとうな労働許可はおろか滞在許可証さえなしで日本を出発し、違法滞在や違法労働をしていたのは、一般にはあまり知られていません。強制送還された例も少なくはありません。それでもヨーロッパには旧植民地をを含めて世界中から色々な目的を持って人が集まります。そんな中で日本人料理人は、技術がしっかりしているので違法を承知で雇うレストランも多くあったのです。
そんな状況が、2008年5月から一変しました。EUの充実と共に労働法や移民法が変わり、EU以外の人たちにはとても厳しくなったのです。今までは3ヶ月以内のフランス研修では要らなかったヴィザが2009年10月からは例え1ヶ月でも必要になりました。法改正があったからといってレストランでの週労働時間が35時間よりずっと多くても、すぐに摘発されることは少ないのと同様に、正規の手続きを踏んでいないからといってレストランオーナーや違法研修生に不幸が襲いかかるのは未だ少ないかもしれません。でも数十年前と比べて、研修を取り巻く環境は、大きく様変わりしているのは事実です。
強制送還の措置を受けてしまうと、5年間フランスに入国できなくなります。こころおきなく料理修業をして、成果を持ち帰りましょう。30歳以下ならワーキングホリデー制度を利用できますし、それ以上の年齢の人でも正規の手続きを経て研修をするよう、願っています。
日仏料理協会
宇田川政喜
今では、日本のちょっとした都市にはブラスリ、ビストロなどフランス料理店の看板がみられます。そして大半のシェフたちがフランスでの料理修業を謳っています。
そのフランス修行が岐路を迎えているのです。
1868年に成立した明治政府は、欧化政策を推し進め、その一環として鹿鳴館を1883年(明治16年)に完成させたあたりが日本のフランス料理の本格的な始動期でしょう。もちろん、横浜に幕末からどんどんできた外人向けのホテルの存在も忘れてはいけません。そこで働いた日本人調理スタッフの中にはもっと料理を勉強したい、と思った人もいたでしょう。シベリア鉄道で渡仏した、かの秋山徳蔵はもとより、彼に影響を与えた築地精養軒初代料理長の西尾益吉、いやそれよりもっと前にはるばるインド洋を汽船で旅してフランスにたどり着いた何人かの勇者たち。1970年代には、今は大料理人として名を馳せている大勢ののシェフたちが、明治の頃と同様にフランスで修行に励んでいました。
今や日本人料理人のレベルはとても高く、その上フランスの料理本やインターネットでの情報の入手によりフランス修行なしでも本場の料理を知ることができるようになってきています。でも若者たちの「本場で仕事がしたい、本場の食材に触れてみたい」とい気持ちは変わっていません。
とはいうものの、明治時代以来今に至るまで、とても多くの料理人たちはまっとうな労働許可はおろか滞在許可証さえなしで日本を出発し、違法滞在や違法労働をしていたのは、一般にはあまり知られていません。強制送還された例も少なくはありません。それでもヨーロッパには旧植民地をを含めて世界中から色々な目的を持って人が集まります。そんな中で日本人料理人は、技術がしっかりしているので違法を承知で雇うレストランも多くあったのです。
そんな状況が、2008年5月から一変しました。EUの充実と共に労働法や移民法が変わり、EU以外の人たちにはとても厳しくなったのです。今までは3ヶ月以内のフランス研修では要らなかったヴィザが2009年10月からは例え1ヶ月でも必要になりました。法改正があったからといってレストランでの週労働時間が35時間よりずっと多くても、すぐに摘発されることは少ないのと同様に、正規の手続きを踏んでいないからといってレストランオーナーや違法研修生に不幸が襲いかかるのは未だ少ないかもしれません。でも数十年前と比べて、研修を取り巻く環境は、大きく様変わりしているのは事実です。
強制送還の措置を受けてしまうと、5年間フランスに入国できなくなります。こころおきなく料理修業をして、成果を持ち帰りましょう。30歳以下ならワーキングホリデー制度を利用できますし、それ以上の年齢の人でも正規の手続きを経て研修をするよう、願っています。
日仏料理協会
宇田川政喜
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