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フランス レストラン事情

3月のはじめから10日ほどフランスにいました。私たち日仏料理協会は、フランスで社団法人を設立してから20年。事務管理機能が充実し、なにかが起こってもきちんと対応できるようになったので、私自身は以前ほど頻繁に時差ぼけと仕事の後処理に悩まなくてもよくなっていたのです。そんなせいでこのフランス滞在は、3年ぶりでした。

エスコフィエ協会世界本部の理事会と総会及び国際料理コンクールがノルマンディ地方のドーヴィルで開催されたのを機会に個人的にいわば視察のための出張をしたのですが、エスコフィエ協会世界本部での話は、また後日。

今回は、知らなくて驚いた事があった、というお知らせです。2009年7月9日を以ってフランスのレストランに対する消費税(正確には付加価値税=TVA)が19.6%からなんと5.5%に引き下げられていたのです。

ブラスリやビストロでの食事代が安く感じられたのは、ユーロが円に対して値を下げたからだ、とパリに着いた時から思っていましたが、そうではありませんでした。19.6%から5.5%というのは値段から計算すると11.8%の値下げになります。この値下げに際して政府と業者団体の間で協約が成立していました。

政府は、税の引き下げと共に以下の約束をしました。

★ 銀行が総額10億ユーロ(約1250億円)をレストラン経営者のために用意し、設備の更新や機材の購入に充てられるようにする。

★ 機材の更新、サーヴィスと生産性の向上に尽くした経営者にmaître restaurateur(=レストラン指導者)の称号を与えた上、減税処置を執る。

これらは、値下げの努力、全国で40,000人の雇用促進、経営者の生活の向上とレストラン設備の充実、違法労働の撲滅、職場の安全性の向上を目標としています。

この政策の一環として私たちが関わっている外国人フランス料理研修をめぐる法改正が行われたのではないのでしょうか。

ドーヴィルに来ていた何人かのレストラン経営者に訊いたところ、ほとんどの人がメニューの値下げではなく、主に、労働効率上昇のための厨房設備の更新と労働条件の向上に充てる、と言っていました。

フランスエスコフィエ協会も、一役買ったそうです。個人経営者が多いフランスで、こんなことまで実現するなんて、聞きしに勝る大衆パワーです。どこの国でも材料原価と労務費などいわゆるプライマリーコストの比率が高く、センスや意識、そして長年の経験を必要とするレストランの個人経営は、粗利益の確保に悩んでいます。今回のフランスのような措置がとられれば、長時間労働と薄給に挫けそうな若い料理人、オーヴンやディッシュウォーマーの交換を考えているオーナーシェフにはとてもうれしい展開となります。

日本では、財源不足から消費税の引き上げが必至となりつつあります。その際外食産業に対する軽減措置を今から働きかける必要があるのではないでしょうか。希望の見えない業界には若く有望な人材は集まりません。衰退の傾向が見えるフランスの個人営業のシャルキュトリのようになってはいけません。現状の分析と先見性、そして行動が求められています。

日仏料理協会
宇田川政喜
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