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サーモンの冷製 ベル・ヴュ風

le Guide culinaireという、19世紀フランスガストロノミの集大成ともいうべきルセット集の新訳とともにヴィデオ撮影を始めた、と以前書きました。

第一回めの料理に“サーモンの冷製 ベル・ヴュ風”を選んで、過程をヴィデオカメラに収めましたが、編集という私たちにはなじみのない作業が待っています。

“サーモンの冷製 ベル・ヴュ風”は、鮭を丸ごとすっぽり入るポワソニエールなる細長い鍋にクールブイヨンを満たし、低温でゆっくり火を入れてそのまま冷まし、上面の皮を剥いで美しい風景を赤ピーマンやトリュフ、香草などで描き、ゼラチンの豊富な透明の魚のだし汁(フュメ・ド・ポワソン)を冷やしてコーティングする料理です。

かつてはどこのホテルにも大きな会館にもあったはずのポワソニエールが見つかりません。
現代のレストランでは肉や魚を丸ごと、または大きな塊りで供するサーヴィスはしていないので、皆さん処分してしまったとのこと。

時代の変遷は材料にも及びました。鍋に入れたままのサーモンを冷ましてから冷蔵庫に入れ、翌日に皮を剥こうとしたら皮下のゼラチンのせいできれいに一度で剥けません。ノルウェーサーモンを使いましたが、これは養殖魚です。紅鮭など日本の天然ものと比べて皮がうんと薄かったのです。エスコフィエがle Guide culinaireを書いた当時は、まだ鮭の養殖はなされておらず、日本の天然物と同じようにしっかりとした皮が付いていたのでしょう。今回の材料の場合、鮭をクールブイヨンの中で完全に冷まさず、ある程度冷めたくらいのところでゼラチンで皮が身にくっ付く前に剥くべきだったのでしょう。

時代を遡って料理を再現するのは、文章を書くのとは違う困難が付きまといそうです。

日仏料理協会
宇田川政喜
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