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マルセイユ

日仏料理協会が横浜の関内で経営しているレストラン “リパイユ” は、リヨン料理を看板に掲げています。この9月5日から新たに元町で “ブラスリ・リパイユ” をはじめますが、今度はリヨン料理だけではなく、プロヴァンス料理を始めます。私が若い頃なじんだ地方の料理です。
地中海の料理は、海産物を扱うことが多く、それ故日本でも多くのレストランが取り入れています。でもフランスで刊行されている料理本を繙くとプロヴァンス料理には意外に魚介類を扱ったものが少ないことに気がつきます。考えてみれば、つい数十年前までは流通事情がよくなく、傷みやすい魚は、海岸線から数キロも離れれば日常の食材としては望ましいものではなかったのでしょう。大衆が日常的に魚介類を口にするのは専ら港のすぐ近く、と言うことになります。

マルセイユは、その点、プロヴァンスの魚料理の代表格と言えるでしょう。この町は、遥かギリシアの昔からその植民港として栄えました。その後、地中海を制して1000年の栄華を誇ったローマが当時ガリアと呼ばれていたフランスをその版図に加えると大発展をしました。ローマの舟が良港マルセイユからローヌ川を遡り、ソーヌ川との合流点であるリヨンまで今で言う高速道路にあたる水上路を確立したのです。
大都市となったマルセイユは、物流の中心地であるリヨンと共に地中海の海上交通が下火となるつい最近までとても繁栄しました。

世界中で有名なブイヤベースbouillabaisseを筆頭にたくさんの料理があります。新鮮な食材が手に入る土地ではあまり手を加えないものが多いのは日本の料理を見てもおわかりでしょうが、マルセイユもご多分に漏れず、シンプルな品々が目に付きます。いわしの内臓を除いてタイムやローズマリーを枝ごと詰めて塩を振り、網で焼いただけのものや小魚に小麦粉を振ってオリーヴオイルで揚げ、レモンをしぼって食べるフリテュールfritureなどです。ブイヤベースだって、簡単な料理です。網にかかった小魚を玉ねぎやフェンネル、にんにくなどと煮てからざるで漉して骨を除いたスープをベースに作ります。

マルセイユ港は、今では街から離れた場所に港湾施設を移しています。横浜港が港の機能を本牧や根岸に移しているのと同じです。で、旧港は、というとヨットハーバーになっています。でも一番奥の岸壁には毎朝小さな漁船が着き、そのまま町の人向けに市場を開いています。ほうぼうからひらめ、鯛、たこも、ほややうにだってあがります。もちろんブイヤベースの基になる小魚もたくさんあります。この港からすぐそばにはもっと本格的な魚市場もあり、市民でにぎわいます。

このあたりにはまた、多くの魚専門レストランが並んでいて、壮観です。

こんどの元町のブラスリからは港はみえませんが、せめて料理でマルセイユの賑わいとリヨンの味を楽しんでもらえたら、と思っています。

日仏料理協会
宇田川政喜
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