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マルセイユ その3

学生の頃マルセイユ北30キロほどのエクサン・プロヴァンスという町に居ました。その頃はまだドルもフランも固定レートで、1フラン当たり75円もしたので一食あたり1.25フランの学生食堂での食事も高く感じられました。それでも昼は食堂でいろいろな定食をとったものでその中でもクスクスは私の好物でした。クールジェット、セロリ、ピーマン、かぶ、にんじん、玉ねぎなどの野菜を羊の肉と煮込んだものを蒸した粗挽き硬質小麦にかけて食べるのです。唐辛子とオリーヴオイルなどで作ったアリサというペーストを加えます。日本ではほとんど食べたことがなかった羊の香りにとても引きつけられてすっかりファンになってしまった私はたまの休みにカンヌ・ビエール大通りの裏に当たるアラブ人街で本場ものを味わうのが無常の悦びでした。

クスクスはモロッコ、アルジェリア、テュニジアといったマグレブ地方の郷土料理です。
米のようにただ煮ただけでは硬くて食べられない小麦をパンなどの材料にするようには粉にせず、粗挽きにして専用の蒸し器で蒸してはほぐし、蒸してはほぐすことを何回も繰り返して用意します。
今では湯を加えるだけで食べられるような商品ができていますが、マグレブ人はやはり蒸してつくる方が圧倒的においしいと言います。

マルセイユには当時も今も多くのマグレブ人が住んでいます。旧植民地だったアルジェリア人を筆頭にフランス人引き揚げ者も含めるととても多くの北アフリカ出身者が異国情緒を醸していましたが、地元のフランス人たちは治安の悪化を憂いていました。今でもパリ・モンマルトルの丘の下などで街の治安に言及するガイドブックの記述でお分かりかと思います。私は独立運動にとても共感していたので好んでマルセイユのアラブ人街に出かけたのでした。
マルセイユから地中海を渡ればアルジェリア、その思いがその数年後のアルジェリア滞在の実現に手を貸したことはまちがいありません。そしてその時クスクスをはじめとするアルジェリア料理や菓子を思う存分楽しんだことはいうに及びません。

日仏料理協会
宇田川政喜
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