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またまたガストロノミ

前回のフランス行きには料理長の国際会議出席と共にもうひとつのテーマがありました。普通のフランス人が“ガストロノミ”をどのようにとらえているか、を確認することです。普通といっても何らかの形で食に関わっている人たちに会うたびに彼らがどのように“ガストロノミ”ないし“ガストロノミック”という語を使うのかを調べることです。

リール市で昼食時にムール貝料理moule à la bièreを食べるために入った繁華街のブラスリでサーヴィス係の人に「リールのガストロノミは素敵ですね。」と賛辞を述べたら「メルシ ボークー。フランドル地方はガストロノミでも知られているんですよ。」との答が返ってきました。そのレストランでは内装が地方の特色を色濃く出していたしサーヴィス形態やメニュー構成もまごうかたきブラスリで、誰が見てもガストロノミックではないのですが…そのサーヴィス係にとってはガストロノミックなのでしょう。

会議の後、参加者全員で郊外のルレ・シャトのレストランに行きました。向かう道すがらこの地方をよく知る仲間の料理長が「あの店はエスコフィエ協会の仲間が料理長をしているミシュラン二つ星のガストロノミックなレストランで、庭園がとても立派です。」と教えてくれました。質も種類も満足のいくアミューズ・ブーシュに続いて美しい盛り付けのフルコース。飲み物はいわずと知れたシャンパーニュ、厳選された白、赤ワインが料理と共に供されます。食後のコーヒーには当然のことながら多種類の小菓子が添えられます。

マルセイユではブイヤベース三昧。この街には魚専門の三つ星レストランがありますが、ガストロノミックではないブイヤベース専門店に予約を旧知の友に頼んでおいたので、2軒とも専らブイヤベースを白の地酒で楽しみました。この友人はかつて南フランスの三つ星レストランでパティシエをしていて日本のとあるホテルチェーンの製菓長でしたから彼なりのガストロノミの定義ができているはずです。マルセイユのブイヤベースは分量がとても多く、従って前菜は注文しませんでした。彼の奥さんはデザートでさえ夫婦で分け合えば充分と言い、食後はコーヒーだけでした。ある意味ブラスリでの正しい注文の仕方だと言えます。

パリに戻って会ったのはランジス卸し市場で肉を商う仲間たちです。パレ・ロワイヤル近くのブラスリを選んでくれました。バーカウンターにてパテ・ド・カンパーニュのカナペで一杯やりながらわいわい。席に着いたらタブリエ(エプロン)姿のてきぱきとした女性サーヴィス係がオーダーを取ります。前菜、メインディッシュ、デザートです。前からガストロノミックな店ではなくブラスリにしてほしい、と頼んでおいたのでここになったのです。昼下がりの春のパリ、旧知の仲間、うまい料理と酒、至福の時です。でもガストロミックな店ではありません。

伝統の名店タイユヴァンでは気楽なランチコースでした。パリのガストロノミックなレストランはほぼすべて予約の再確認を電話でしなければなりません。友人に頼んでおきました。彼は「ガストロノミックなレストランはさすがに電話の応対も丁重で品がある。」と言っていました。このレベルの店にしては安価なランチ専用の簡易コースを頼みましたが、アミューズ・ブーシュ、前菜、メインディッシュ、デザート、コーヒーに小菓子。食前酒のシャンパンにコースに組み込まれた白、赤ワイン、それにコーヒーの後の食後酒としてアルマニャックまでフランスのガストロノミをすっかり堪能しました。慇懃で丁重でありながら素早いサーヴィス、食卓を盛り上げるちょっとした語りかけ、サーヴィス係の基本的な仕事振りが私たちを優雅な気持ちにさせます。

最後に行ったオペラ座近くのグラン・カフェは日本人の友人たちと一緒でした。19世紀から続くオペラ座近くのホテルのレストランです。店内はパリの19世紀の内装で、さすがに立派です。シャンパンで乾杯をし、前菜とメインディッシュ、デザート、コーヒーと続きます。サーヴィス係はエプロンをかけててきぱきと動く男性。客に話しかける言葉もざっくばらんです。高級ホテルだけのことはあってvestiaire(クローク)はありましたが、高級なブラスリです。

長くなりましたが、フランス人にとってのガストロノミを、端的に定義を質すのではなく、用法を探って彼らのこの語に対する認識を知る、という方法を採ったのです。結果は、“ガストロノミックなレストラン”と“ブラスリ”の差異が私の定義と同じであることが確認できました。10名に満たない対象でしたからガストロノミという学問分野でのフィールドワークというにはとうてい充分ではありませんでしたが、普段その渦中にいるフランス人の“ガストロノミ”なる語の使用範囲を知ることができたのは収穫でした。

“ガストロノミ”の定義は佐原秋生著『ガストロノミ』に譲るとして、ここではガストロノミックなレストランとブラスやビストロの違いを以下に記しておきます。

ガストロノミックなレストラン       
【 料理 】
アミューズ・ブーシュ+前菜(冷菜と温菜の2種の場合あり)+ポタージュ(フランスにはない)+魚料理+口直しの氷菓(フランスではまれ)+肉料理+チーズ(盛り合せから選択)+第一デザート+第二デザート+コーヒー+小菓子やチョコレート
※簡易コースの場合魚か肉の選択、デザートは一皿。
【 飲み物 】
食前酒(シャンパンが主流)+シャンパンを含む白ワイン+赤ワイン+食後酒
【 内装 】
シャトーや館風の豪華絢爛または高級ウルトラモダン          
【 サーヴィス 】
クローク係、ソムリエ、メトル・ドテル (給仕長)、シェフ・ド・ラン(テーブルごとのサーヴィス責任者)。 サーヴィス係は男性主体

ブラスリ・ビストロ
【 料理 】
アミューズ・ブーシュはなし+ボリュームのある前菜+付け合わせ たっぷりの主菜+シンプルなデザート+コーヒー
【 飲み物 】
食前酒(飲まないことが多い)+白または赤ワイン
【 内装 】
料理に合わせた地方色豊かな装飾
【 サーヴィス 】
クローク係、ソムリエはいない。サーヴィス係は女性も多い 


まあこういったところが私なりの識別でしょうか。ガストロノミックなレストランでの食事は多分に非日常的であるのに対しブラスリでのそれは日常的な要素が強い、と言えます。しかし対比する二つの分野の領域は重なる部分も多い、つまりどちらとも言えないケースもあります。ガストロノミックな要素を多く含んでいるブラスリもあるし、フレンドリーな家庭的雰囲気を持つガストロノミックなレストランもある、ということです。

皆さんはどのようにお考えですか。ご意見をお待ちしています。
メールアドレス:afjg@dmail.plala.or.jp

日仏料理協会
宇田川政喜
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