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ロニョン

日本にいてどうしても食べたいが、なかなか食べられない料理がいくつかあります。ロニョンもそのひとつです。ロニョンとは rognon 腎臓のことです。仔羊もありますが、仔牛の新鮮な
ロニョンをバターでソテしただけのシンプルな料理でも特徴のあるその歯ごたえはたまりません。でも少し古いものは小便臭くて閉口します。だから信用のできる店でしかオーダーしません。

ところが、です。フランス料理のバイブルとして有名なエスコフィエ著『le Guide
culinaire=料理の手引き』に rognon de coq という項目があります。辞典の編纂を始めた頃、私は当然のように「雄鶏の腎臓」と訳していました。その後ある書物でそれが腎臓ではなく、雄鶏の睾丸であるらしいことを知り、すぐに訂正を始めました。
以前ある料理長からこのことについて質問を受け、今一度確認をしようと多くのフランス人料理長たちに訊いてみました。今時の料理にはほとんど用いなくなっているので、若い人は知りません。そこで先日バルセロナで参加したエスコフィエ協会国際本部の総会に来ていた旧知のベテラン料理長たちに尋ねてみると、睾丸だ、と答える人と背中部分の脊髄の脇に付いている部位だ、と言う人がいました。
さあたいへんです。そこでフランスの国立職人養成学校の教授や、パリ卸売市場ランジスの鶏肉業者まで仲間全員にアンケートをとってみました。

結論としてロニョン・ド・コック rognon de coq とはやはり雄鶏の睾丸で、鶏の背に付いている部位は腎臓であることがわかりました。腎臓は生理学的には rein[ラン]と言いますが、食肉や料理では
rognon です。このあたりが誤解の始まりなのでしょう。同じものなのに異なった名称があるのはなぜでしょうか。日本でも焼き肉店で心臓をハツと呼ぶのと同じく直接的に内蔵を示すのを避けるためなのかも知れません。(因みにハツは英語のheartハートから来ているのをご存知でしたか。)
日本の焼き鳥店ではこの両部位とも使い、腎臓は背ワタと呼ぶそうです。

このような紛らわしいフランス語の部位の名称が混乱を生んだのです。

日本のフランス料理やイタリア料理などの世界では片仮名で原語をそのまま表現することが多いのですが、そこに一般的に通っている英語を組合わせると意味が異なる場合がよく見られます。例えばフランス語のスープ soupe は具がご
ろごろ入っていてパンを浮かせて食べる田舎臭い料理なのに英語では液体料理の総称です。フランス語で液体料理の総称をポタージュ potage と言うのに対し英語の potage は濃度のある液体料
理です。アントレ entrée はフランス語では前菜ですが、アメリカではメインディッシュです。 entrée は入口と言う意味なのでなぜアメリカでメインディッシュになったの
かはわかりません。

日本では英語が幅を利かせていますが、フランス料理の世界はまだまだフランス語が中心です。だからと言って一般の用法とこれだけ意味がちがうと面倒なことになります。下手をすると食品名偽装にも問われるかも知れないので気を付けたいものです。

日仏料理協会
宇田川 政喜
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