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玉ねぎ

玉ねぎは、フランスではエシャロットと並んで、ほぼすべての料理の味のベースとして使っています。地中海地方で多用するにんにくと同様、玉ねぎなしでは料理ができません。

そんな玉ねぎのスペルがフランスで今年、2016年9月から変わったのです。フランスにはアカデミー・フランセーズという組織があり、言葉の言語学的、文学的正当性を決定する役割を持っていて、時代に合わせて時々スペルを変更します。国語審議会が日本語の送り仮名などを検討、変更するようなものと思ってもいいでしょう。
今まで玉ねぎに当たる語のスペルは、[オニョン]という発音にはそぐわないoignonでした。フランス語ではoiは[オイ]ではなく[ワ]と読みます。また、gnは[ニュ]の発音に充てるスペルです。ですからoignonのスペルは[オニョン]ではなくて[ワニョン]と発音するのが自然です。私の年老いた友人の中にはかつて、玉ねぎを[ワニョン]と発音する人もいましたが、彼も今では[オニョン]と言っています。ですから誰が見てもおかしなoignonというスペルが ognon と変更されるのは必然だったのです。

この情報をもたらしたのは、フランスから一年の修業を終えて帰国したばかりの若い料理人だったのです。彼は料理コンクールへの参加を目指していることもあって正しいスペルを書こうという意思を持っているのです。日本へ帰国寸前にフランス人の友人からこのスペルの突然変更を知らされてびっくりしたそうです。でも学校でのテストならともかく料理コンクールやメニューで日本人料理人が旧来のoignonと書いても当分の間許してもらえるのではないでしょうか。
一方、語学教育にかかわる人たちは、注意が必要です。玉ねぎは ognon です!


日仏料理協会
宇田川政喜

大衆料理

今年も月28日に世界中の都市で恒例のエピキュロスの晩餐会が開催されます。
近代フランス料理の祖オーギュスト・エスコフィエの誕生日を記念してエスコフィエ協会国際本部の総会でテーマを決めます。今年は「大衆料理 cuisine populaire」。初めは「民衆料理」の訳を付けようと思ったのですが、民衆だと政治的な意味合いを含むのでここは大衆酒場、大衆食堂などと用いる大衆という語を使うことにしました。
フランスのほとんどの飲食店はカフェか、カフェが併設しているブラスリ、ビストロです。日本で多くの人がいまだに持っているフランス料理のイメージを表している店はガストロノミックレストランrestaurant gastronomiqueと呼ばれています。
多くのエスコフィエ協会会員はこのガストロノミックレストランの料理長なので今年のテーマのような大衆料理は普段作っていません。店のコンセプトからしてメニューの値段も普段とは違う安いビストロ価格で提案するわけにもいきません。いわば牛丼を高級料亭で供するにはどうしたらいいか、を考えるのと同じです。
もちろん今回の提案以外にも19世紀から今日に至るまで多くの才能ある料理人がこのテーマに挑んできました。でも私の数少ない経験からして本来の地方の名物料理をしのぐ翻案料理に出会っていません。簡単に言うとおいしくないのです。

今年私の経営する店ではメインディッシュにラングドック地方のカスレを選択しました。カスレは大昔は空豆、後世になると白いんげん豆とソーセージ、鴨か鵞鳥のコンフィ、塩漬け豚肉などを煮てオーヴンで焼いた料理です。ブイヤベースなどほかの大衆郷土料理と同じくとてもヴォリューミーです。この一品をどのようにコース料理に取り入れていくのか、料理人の技量が試されます。

エスコフィエ協会国際本部では世界中どこでもいつでも手に入る食材をテーマに選んできましたが、今年は食材ではなく、高度な料理哲学と技術を要求されているようです。29日以降、スイス、フランス、中国、日本など会員の皆さんがどんな趣向をこらしたのか、インターネットで見るのが楽しみです。

日仏料理協会
宇田川 政喜

メニューの歴史と現実

食事を提供する店ならおそらく世界中どこでもメニューがあるでしょう。特に高級店のメニューは、それ自体が美しく、これから始まる美食の世界を想像させるに足る言葉で書かれています。
メニューは、もともとmenuと書くフランス語で、[ムニュ]と発音します。「小さい、些細な」を意味する語が語源です。因みに日本では専ら「品書き」の意味で使っていますが、フランスのレストランではmenuは「コース料理」の意味で用い、品書きはcarte[カルトゥ]と言います。
旧体制の時代、つまりフランス革命以前の王や貴族の会食には品書きは存在せず、自分の周辺にあるものを周りの人に頼んで取ってもらって食べるしかない、という食事風景でした。この頃の品書きは、サーヴィス係や料理人が仕事の段取りをしやすいようにキッチンの壁に張り出したものしかありませんでした。フランス革命が起きて王や貴族の館で働いていた料理人や支配人たちが街に出て食堂を開き始めた19世紀になると店の前に「本日の料理」を張り出したり、黒板に提供する料理を書いて告知したりするようになりました。高級料理の分野でもサーヴィス方法が変わってかつてのようにすべてを一度に卓上に並べるのではなく、サーヴィス係が大きな銀盆を持ちまわって客に料理を見せ、取り分けてくれるようになったと同時に、今日何を食べるかがわかるようにきれいに書かれた品書きを用意するようになりました。
幕末の日本に西洋文化の代表のような形で導入されたのはこういう時代のフランス料理だったのです。鹿鳴館を皮切りに日本中に広まっていきました。メニューのフランス語日本語併記はすでにこの頃定着したのでしょう。客がわかってもわからなくても、明治政府が目指した欧化政策に従っていたのです。

でも今だって笑ってはいられません。洋食屋さんを除いて、どのフランス料理店でもイタリア料理屋でも西洋料理を提供する店は、読む人もいないフランス語やイタリア語でも書いてあるのです。それでもきちんと書かれているのならいいのですが、ミススペルや文法の間違いのオンパレード。例外を除いてほぼすべてのメニューフランス語は全滅です。一昔前にフランスやイタリアの日本料理店のメニューが噴飯ものだったことを思い出させてくれます。それほどめちゃくちゃに近いフランス語やイタリア語ならいっそのこと唐草模様でも書いておいてくれる方がよっぽどましです。
1970年代から多くの日本人料理人がフランスやイタリアへ修行に出かけ、人にもよりますが、比較的長い期間滞在していたはずなのにその人たちがこんなメニューを書くなんて。料理の修業はしてもフランス語はおろそかにしていたのでしょう。メニューを書いている料理長の皆さん、フランス語で書くのならせめて間違いのないようにしてください。初めに書いたようにメニューは想像を膨らませるいわば文学的なキャッチコピーなのです。客にもフランス語を理解する人もいるのです。そしてその人たちの食欲は散在する間違いで削がれていくのです。

日仏料理協会
宇田川政喜

フォワ・グラのテリーヌ

日本の外食産業はとても研究熱心です。かつてはフランス料理の高級食材として知られていたフォワ・グラがファミリーレストランや居酒屋で注文できるようになりました。

フォワ・グラはご存知のように鴨や鵞鳥といった渡り鳥の肥大肝臓です。これらの鳥は、長くてハードな移動期間の栄養を蓄えるためにらくだがこぶに貯めるように肝臓に脂肪を蓄えるのです。だから多くの人が考えているように強制肥育だけによって脂肪肝を作っているというだけではなく、もともと備わった自然のエネルギー蓄積システムを人間が利用しているのです。もし強制肥育だけで脂肪肝が得られるのなら鶏でもできるはずでしょう。ですから鴨や鵞鳥の肝臓は、病的な人間を含めた他の動物のそれとは区別するべきなのです。

閑話休題。私はフォワ・グラのテリーヌが大好きです。私の料理知識の先生でもあるリヨンのMOFシャルキュテイエ、ジョルジュ・ドラングルさんの作る抑制のきいた上品な鵞鳥のフォワ・グラのテリーヌは、今でも夢に出てきます。フランスには鴨、鵞鳥ともフォワ・グラには日本の和牛のように1級から5級のランクがあります。適度な大きさで脂肪が多すぎず少なすぎず、痣や傷のないものが1級です。そして鵞鳥の方が鴨より1.5倍ほど高いのです。今は知りませんが、かつては1級のフォワ・グラは日本に輸入されず、フランスで消費されていました。
レストランでは鴨のフォワ・グラをフライパンでソテすることが多いのですが、味の濃いフルーツ系のソースなどを合わせることを考えてあえて苦味の強い鴨を使うのです。
テリーヌは、ポルト酒、パプリカパウダー、塩、胡椒を振ってなじませておいた鵞鳥のフォワ・グラを厚手のテリーヌ型に詰めて低温のオーヴンで加熱し、ゆっくり冷ましてから冷蔵庫でなじませた料理です。ドラングルさんはフォワ・グラの香りに邪魔になる、という理由でトリュフを加えることも好んではいませんでした。

先日パリの2つ星レストランで近年にしては珍しくフォワ・グラのテリーヌがあったので注文しました。今どきのガストロノミックなレストランですからとても上品に小さな直方体にカットされたテリーヌが3つほど付け合わせとともに皿に鎮座していました。フォークで刺すのも惜しいようにきれいに盛り付けされた品を口に運んで少し驚いてその後少しがっかりしました。バターのような舌触りなのです。フォワ・グラの風味も心なし淡い。かのオーギュスト・エスコフィエも言っているようにシャルキュトリの名人が作るテリーヌに料理人のそれはしょせんかなわない、というのがもし正しいとしても2つ星のレストランならもう少し何とかなるだろう、と思いました。私なりに原因を考えてみると、そこには調理機材の現代化がみえるのです。伝統的なオーヴンで加熱するとどんなに上手に工夫してもどうしても脂肪が融解分離し、20~40%のロスが出るのです。一方、現代のコンヴェクションオーヴンや真空調理法を利用するとほぼロスが出ません。原価率に大きく影響するし、新調理法で機械的に調理をコントロールする方が技術的なリスク、つまり失敗がないのです。その代わり脂っこさが出てしまうのです。レストラン経営者としてフォワ・グラのテリーヌの製造過程で生じるロスを減らすことを追求してきた私へのしっぺ返しのような食事でした。
脂肪だらけの和牛肉を食べるにもしゃぶしゃぶにしたりして脂肪を落とします。本当に美味なものを追求するには経済効率を同時に求めてはいけないのでしょう。やはり「おいしいものをリーズナブルなお値段で」「や、安くておいしい」はしょせんそれなりなのでしょう。

日仏料理協会
宇田川政喜

ストラスブール II シュークルート ベクノフ

アルザス地方の名物と言えばだれもが思いつくのがシュークルート。酸味のある千切りのキャベツとベーコンやソーセージなどの豚肉製品を煮た、いかにもドイツ風の食文化を表しているこの料理は、フランス中の人がアルザスと結びつけるものです。ドイツ語のSaurkrautサワークラウトをアルザス地方で発音だけを映して意味は異なるchouシュー=キャベツ、croûteクルート=食事のこの語の意味はsaur=酸っぱい、kraut=キャベツです。
ドイツやベルギーのビヤホールでもよく提供されるサワークラウトというこのキャベツは、意外にも白菜の漬け物と同じ発祥のようです。中央アジアの遊牧民族が保存食料のひとつとしていた乳酸発酵した野菜を中国が取り入れたのが白菜漬け、3世紀頃から激しくなったフン族のヨーロッパ侵略の際、遺したものがサワークラウトです。
キャベツを千切りにすることで酵母を出しやすくし、塩漬けにして乳酸発酵させます。昔は樽で、今はプラスチック容器に入れて石などの重しを乗せる様まで白菜の漬け物とよく似ています。
伝統的にはゲルマン的つまりアルザス的にシャルキュトリ製品をシュークルートと共に鍋に入れ、杜松の実、粒黒胡椒、クミンシードなどで香りづけしてアルザス産白ワインを注ぎ入れ、蓋をして蒸し煮にします。ストラスブール中心にある大聖堂の正面にあるレストランカンマーゼルが1970年代から魚のシュークルートを提供し始め、評判を呼びます。薄味のシュークルートの上に鮭、白身魚、鰊の燻製キッパーズをスライスして並べ、上から一種の白ワインソースをかけたものです。ハムやソーセージなどシャルキュトリ製品と酸味のシュークルートに慣れた私にはあまり歓迎するものではありません。でも超満員の店にいるとこれをおいしいと思わない私が間違っているのだと思えるようになります。

maison Kammerzell  choucroute

シュークルートと並び称されるアルザス料理にベクノフがあります。Baekenofe、Baekeoveと綴るこの料理は伝統的に蓋付き楕円形の重い鉄製鍋にじゃが芋、肉、野菜を入れてオーヴンで長時間蒸し煮した料理です。
Baekeベーカー、パン屋、offe,oveオーヴン、窯、の意味のアルザス語で、かつてパン焼き職人がパンを焼き終わったオーヴンに客が鍋を入れて煮込んだのがこの料理の始まりです。庶民が肉を食べられない時代にはチーズとじゃが芋で作っていたそうです。

Baekenofe  Baekenofe

シュークルートやベクノフ、ブルゴーニュ地方の牛の赤ワイン煮込みブフ・ブルギニョン、フランドル地方の肉と人参、玉ねぎの煮込みポチュレヴィシュ、マルセイユの魚の煮込みブイヤベースなどなど、地方の大衆料理には共通したものがあります。いずれも鍋ひとつでできること、じゃが芋や穀物に野菜、肉を加えて完全食品にすることです。異なるのは地方により用いる香草や香辛料の違い程度。日本の各地にある郷土の名物鍋料理にとてもよく似ています。これらをおいしいい、と心から思うには慣れ親しんだその土地や風土、会食する家族や仲間の顔、が必要になるでしょう。食は食べ物だけで成立してはいないことがよくわかります。

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